第八話「湖の秘密」
 



 暖かい…というよりは暑いぐらいの日差しが照りつけてくる。目の前には大量の水が青い湖面を覆っている。ここが地球であったならどうってことはない田舎 の風景なのだろうがここはルナシティIII、月にある人工都市の中だった。その六角形の巨大な居住モジュールのいくつかの中央にある一つの内部の大部分が 人造湖になっていて多量の水が蓄えられていた。湖の周りは森林と背の低い建物…大抵は木造建築に似せて作られている。(実際の材料は月の砂を固めて作った ムーンコンクリートだ)別荘やホテルの類がほとんどである。
 このブロックは宇宙に住む人々が心身共にリフレッシュするために建造されている。それだけでなく生命維持に不可欠な水を大量に蓄えて置くため、森林を維 持して酸素を供給するための設備でもあるのだ。
 ドーム型の天井には巨大な窓があって今は直接太陽光線が降り注いでくる。もちろん減衰フィルターは通してあり、偏光プリズムが窓に仕込んであって時間と ともに太陽が"移動"する。ここでの夜には太陽光線はシャットアウトされてその分のエネルギーは蓄えられ実際の月の夜の際には人工照明で使用される。が、 今はルナシティIIIのある晴れの海は昼に入っているから頭の上にあるのは本物の太陽だった。
 湖面には波が打っている。地球と太陽の引力で波が起こっているのだ。湖の直径は1キロ程だが案外広く感じる。湖の真ん中には島があって木々が生い茂って いた。こういう環境なので密閉された空間ではあっても対流が生じてそれが風になって吹いてくる。暖かい風だが彼…新田原優伍は暑いのは嫌いではなかった。 どちらかというと寒いのが苦手だった。特に寒い雪の日は……ふと、嫌な事を思い出しそうになったもののその気分を遮る声がした。よく通る感じの少女の声 だった。

「優伍さん。お酒、もう飲んじゃってるんですか?」

 彼女の名前はいおん。見た目12,3歳程で小柄な少女だ。
白い幅の広い帽子に腰まで隠れたパーカーを羽織っていて、すらりとしたむき出しの脚に赤いサンダルを履いている。赤い髪の下の青い目はさっきの口調程彼の 行動をとがめている訳ではなかった。優伍は湖の岸辺に板張りの桟橋に沿って作られているカフェの一角でビーチベッドに海パン姿で寝そべりながらパラソルの 下でカクテルをちびちびやっていた。サングラスをしたまま少女の方に向き直って半身を起こす。

「別にいいじゃないか、こんな度数の軽いのジュースみたいなもんだろが」
いいながら彼はいおんの視線に気づいた。彼の体を見てちょっと驚いたような表情をしている。
「優伍さん…それ…」尋ねたくてもどこか言いにくそうな様子だった。
ああ、そうか…
「ん?お前見るのはじめてか??これは子供の頃事故に遭って死にかけた。その時のものだ」
優伍の全身は傷跡だらけだった。どれも古い傷で子供の頃というのも確からしい。
普段見えている右の頬の傷跡もその時のものだがいおんが体全体を見たのはこ れがはじめてらしかった。
「事故、なんですか?」傷を気遣うような口調で聞いて来た。
「ああ。事故っていうか空港で爆弾テロに巻き込まれたんだ。
なんせ酷い事態だったもんで当時は相当混乱してたから一命を取り留めるのがやっとでな、
でな きゃ今時こんなに傷跡が残るなんてありえんだろ?」
くすっと自重気味に笑ったもののいおんの方はまだ心配そうな顔をしている。
「いやまぁなんだ、今は別に痛くない。そんな顔すんな」
「そうなんですか?」
「ああ。こんな傷跡どおってことない、だがな…」
優伍はちょっと遠い目をして言った。
「俺は…あの時、もっと大事なものを失ったからな…」
「え?」
「いおんちゃん、泳ごうよ〜せっかく水着になってんのにー」
いおんが聞き返そうとした時に少年の声が割って入った。
振り返ると白い猫がいた。ワッフルだった。



「だから、なんでお前がいるわけ?そもそも猫でロボットのくせに水泳なんてすんな」
優伍が嫌な顔をする。ワッフルの方は全然おかまいなしだ。
「いいじゃないそんなの。ボクはいおんちゃんが好きだから一緒にいたいんだよ。
いおんちゃんの水着姿、かわいいんだろなー」
ワッフルは少しも悪びれる事な くいおんに言った。
「あ…改めてそう言われるとちょっと恥ずかしいかな?」
少女の顔がちょっと赤くなった。
「水着姿ってなぁ、こいついつも水着みたいな格好しょっちゅうしてるじゃないか」
メタルガードに入ってからは特にワンピース型のアンダースーツを着ている 事が多かった。
「それに見てどうこうって程のもんじゃないだろが、ぺったんこだぞこいつの胸」
「ゆ、優伍さんっそんな言い方あんまりですー!ぺったんこって…ちょっとぐらいあります…」
「そうだよ!あんまりだよっいおんちゃんにあやまれっ」
「うるせぇ!うるせーっおまえはだまってろ!」
優伍はワッフルに大人げない調子で言い返した。
「あう………いいです……別に。優伍さんがそう言うんなら…」
うつむいたまま言う。
「で、でもっその代わり私のお給料が入ったらそのお金で体改造してもいいですよ!?」
顔をあげていおんは思い切って言っちゃったという感じで優伍に訴えか けた。
「改造ってお前…」
いきなりの発言に返す言葉がない。
「私の体は作り物ですから、優伍さんの好みの仕様に改造して下さい!もうぼいんぼいんでいいですから!!」
ちょっとやけくそが入ってもう自分でも何いって んだかわからないぐらいだ。
「………だめだ」優伍はあきれた表情で却下する。
「だって、優伍さんが私の事…」
「まずお前の体の償還が終わってない。
正式にUNIVACの所属になったから償還率は下がったが実質はまだまだ借金だらけだ。
まぁ天引きされてだが給料は 出るけどな」
「あう…」

 もともと旧式のアンドロイドだったのを現在の技術で最新のボディに生まれ変わったのだが全額無償で提供されているわけではない。社会に貢献したり働いて 金を稼いだり人間のマスターにいわば身請けしてもらってその分を返す必要がある。アンドロイドは人間の奴隷ではないがそうやって生まれて来た分のそしてこ れから生きる為の分に関して働く必要はあるのだ。いおんの場合最新型の第五世代ボディなので従来型に比べると高価で維持費もその分かかる。が、これは別に 本人が希望してなったわけではないのでその割合分は考慮されているそうだ。いずれにせよ彼女は完全な意味で自由ではないと言える。

「それにこないだPPG合わせたばっかりだろが?胸なんかでかくしたらもう一回調整しないといかん。
そんな個人的な事情でいったいいくらかかると思ってん だ?UNIVACは公的組織だぞ、カネと時間をドブに捨てる気か?」
「あうう……で、でも優伍さんが合わない所があったら後で調整していいって言ってましたよね?」
「だめだだめだ。PPGでも全体のバランスとかいろいろあるんだよ!それ全部いじれっていうのか?とにかく却下だ、却下」
優伍はきっぱりといったがいおん はまだ何か言いたそうである。
「…でも…男の人ってやっぱり、大きい方がいいんでしょ?」
「お、俺は別にだな…そのなんだ、お前はそのままでいいって言ってるんだ。
だから変にいじるな、わかったな?絶対にだめだからな?」
頭をかきながら優伍は 念を押した。
「…ふうん…そうなんだぁ…」
優伍の慌てぶりを見てワッフルが横目で思わせぶりな口調で言う
「なんだよ、何が言いたいんだ?」
「べっつにぃ…いおんちゃんがいるから言わないけどー」
「いちいち気に障るやつだなおまえは」
「ちょっ、ちょっと二人とも」
いおんが慌てて二人の言い合いの間に割って入ろうとした時だ

「あれーいおんちゃんじゃないの?」

振り返ると見覚えのある二人が少し離れた所に立っていた。
「ジェシィさん、アリスちゃん!?」
いおんの友人になったお下げと金髪の姉妹だ。
「偶然ね〜というかまだまだルナシティは狭いってことかしらねぇ…」
ジェシィはそう言うと優しい笑顔で笑った。アリス共々水着姿でアリスの方はダイビング 用の装備を手にしていた。
「ん?いおん、知り合いか?」
優伍の問いかけに対していおんは二人を紹介した。



 アリスはルナシティIIIにあるツォルコフスキー大学の学生でジェシィは彼女の姉、共にいおんの友人である。他にジェシィのペットロボットでPICO2(ピ コピコ)という名前の丸い体にウサギのような耳と直接体からスニーカー型の足が生えているペットロボットを連れていた。
「へぇいおんちゃんのマスターさんて案外若いんだなぁ」
アリスは結構率直な物言いをする。
「ところで、ここには何しに…って泳ぎに着てるんですよね、その装備はダイビングですか?」
「話せば長い話なんだけどねー」
 ジェシィが説明する。アリスの専攻は環境生物学で主に生き物の環境への対応を学んでいて宇宙や月といった地球と異なる環境 への生物の生態や遺伝情報の変化を研究している。なんでも知性化したイルカ等を唯一宇宙に運び込んでいろいろ実験している学部なのだそうだ。そこで教授か らルナシティIIIにまつわる様々な噂話のうちのこのF3ブロックの湖に現れる謎の怪獣の話を聞き実際に調査してみようと言う事になったそうだ。

「怪獣だって?おいおい、ここの湖は完全な人工湖で出来上がってから30年程しか経ってないぞ??
そんなもんいるわけないだろうが?」
話を聞いていた優伍 が呆れて言った。
「大方教授にかつがれたんだろうけどな」
にやにやしながらカクテルを口に運ぶ。
「いやぁそれが案外そうともいえんでの」
ひょっこり会話に加わった声の主は日に焼けた背の低い白髪の爺さんで横縞のシャツに半ズボン、丸眼鏡に船長帽をか ぶり薄荷のコーンパイプを加えている。確かこのボートハウスのオーナーである。
「おじいさん、何か知ってるんですか?」
ジェシィが聞いた。
「うむう…ここ1、2ヶ月ばかりの話だが何度かこの湖で首が長く目が赤く光る大型の爬虫類のような生き物が目撃されてるんじゃ。今の所人的被害はないが変 な噂を立てられては商売上がったりになるからのぉ」
爺さんは長い顎髭をいじくりながら湖の沖合を見て言った。
「そりゃ大変だ。爺さん満月の夜には気をつけた方がいいぜ」
優伍が茶化す。
そんな彼の発言を無視するように老人は女の子三人の立っている方を向いて話を続けた。
「わしが若い頃、大西洋の赤道直下の沖合で漁をしていたんだがある時、時化で海が荒れに荒れてのぅ…
そんな中じゃった。全長が50mを超すような巨大な生 き物に船がぶつかったんじゃ」
「おいおい…」
優伍が突っ込みを入れるが全然無視で話を続けた。
「後でわかった事だが宇宙から照射された太陽発電所のマイクロウェーブを海上で浴びたある種のクラゲが突然変異して巨大化したらしい。あんときゃぶったま げたよなぁ…」
 そもそも只の漁師の爺さんが月の都市でボートハウスの店番なんかやってるのが変と言えば変だ。いかにもというなりをしているが実際は宇宙でそこそこ活躍 した技術者かなんかで引退後に地球には降りず半分趣味で商売しているといったところか。彼の話はさらに続く。
「ここの湖の水もそうじゃ。ただの水ではない、太陽からの有害な放射線からルナシティIIIを守る為に各ブロックの天井に送られている。同時に生活用水や 温度調節に使われてその後循環してここに戻って来ている。いわば一番放射線に晒されて来ているわけでそれがなんからの影響をここに棲む生物に与えて来てい るんではないかと思うんじゃよ」
「おじいさんもですか?教授も同じような事を言ってました。放射線やその他の地球とは異なる環境要因が考えられるって」
アリスが老人の発言を受けて答え た。
「ん?教授?大学のセンセイか?」
「ツォルコフスキー大学のフェッセンデン教授です。環境生物学の、ご存知ですか?」
「ああ、セルゲノフの奴かのぅ…奴はわしのチェス仲間でなここにもよく来るよ」
「知り合いかよ、爺さんグルなんじゃないのか?」優伍がそう言うが全然意に関せずだった。
「やつぁちょっとスケベだが嘘を言うような男じゃないよ?嬢ちゃんたちボートを出して調査してみたらどうかね?」


***


 ルナシティIIIの住宅ブロック、その下町のとある一角に貸しガレージがあってその中で青い髪の少女が一人、ツナギの作業着姿で金属製のフレームやら何 やらが入り組んだ機械に向き合っていた。その機械はこの時代にしてはかなり無骨な作りで中心となる部分の周りには剥き出しのワイヤーだの歯車だのがビス止 めで取り付けられていた。彼女は各部をチェックすると燃料タンクの蓋を開けて発火性のある液体をポリタンクから注入した。これは内燃機関で動作する自動車 だった。月という特殊な環境に配慮してさすがにガソリンは使えないがメタノール系の燃料なら規定値内で使用する事ができる。エンジンから伸びるマフラーが 最新のナノテクノロジーで構成された触媒によって排気ガスをクリーンにする。それはいいのだが本体の無骨でレトロなデザインにこのマフラーは全然合ってい ない。まぁこれは仕方ない所か。水素エンジンならなんの制限もないのだが大抵は完成されたパッケージになっていて彼女のように一からエンジンを組み立てる という面白みがあまりない。少女はクランクを手に取るとまだ剥き出しのままのフレームの一番前に取り付けられたエンジンの正面に差し込んで回しはじめた。

 ゴッゴッゴ……ぶおん、おん・…

 バタバタ音がしてそのまま停止した。動きそうな気配はしたのだがまだ調整が不十分ぽい。
「インジェクターの具合か排気弁バルブのタイミングかのう?プラグは見てみたかい?」
少女が振り返ると小太りの初老の男が立っていた。手にコーヒー缶を二つ持っている。
「ちょっと休憩にしようや、これワシの奢りじゃけん」
いいながら缶を投げてよこす。
「ありがとうございます、いただきます」
缶を受け取って礼を言う、礼儀正しい娘だった。
 二人はガレージの隅の古ぼけたベンチに腰掛けた。
「音で状態がわかるのですか?数値や理屈では問題ないのにどうもよくわかりません」
「まぁんだ。勘ってやつかな?こればっかりは経験を積まんとどうにもならんがの」
「経験ですか…わたしにはどうも足りなさすぎます」
貰った缶コーヒーのタブを冷える側に回す。タブを押し込むとブシュンと音がして飲み口が開いた。
男の方 はホットにして飲んでいるようだ。
「ま、まぁ経験ちゅうてもガキん頃にエンジンいじくっとった程度の事じゃがのう。ワシの生まれたメキシコシティは高度が高いせいで空気が薄くてな、燃焼の 調整に工夫がいったんじゃよ」
「地球ですか。一度行ってみたいですね…自分の作った車で地平線の向こうまでぶっ飛ばせたら最高ですよねきっと」
そういいながらガレージの明かり取りの窓 から偽りの青空を見上げた。
「お嬢ちゃんも不思議な娘じゃのう、そんな原始的な機械よりずぅっと進んだ精密な体を持っておるちゅうのに」
少女はアンドロイドである。澄んだ青い瞳に穏 やかな笑みが浮かんだ。
「機械って可愛いですよ。愛情を注げば注いだ分だけ返してくれますから」
「ふむそうじゃのう…ワシもエンジニアの端くれじゃけん、そう思うよ」
「ありがとうございます。後でエンジン見てもらえますか?」
そういって彼女ーセリナはにっこり笑った。





***


 ランカは町外れのトレーニングジムでサンドバッグに向かい合っていた。グラマラスな肢体にすらりと長い手足はアスリートというよりはモデルに近い体型 だ。タンクトップにショートパンツ、手には真っ赤なグローブにリストバンドといった出で立ちで軽いフットワークで小気味よいリズムでパンチを繰り出してい る。軽めのメニューとはいえ全然息は乱れていない。ランカはアンドロイドではあるけれど自分の体を直接使って運動する事を大事にしている。体を鍛えるとい うよりは感覚としての実体を保って行きたいからだった。それに生きると言う意味があるのだと。
 二十人程いるジムにまた一人入って来た。半数近くいる女性の目が彼に集中してあるものはきらりと輝く。男性の多くにはきやがったか…というやや落胆の表 情が浮かんだ。身長190センチの長身に短い金髪、アイスブルーの瞳をたたえた面長の顔は非常に均整が整っている。体型は逆三角形で胸板が厚い。筋肉もほ どよく付いていた。さわやかな笑顔からは白い歯がきらりと輝く。
 彼が一歩進むたびに居合わせる女性の微笑みが浴びせられ軽い挨拶がかわされる。一方で男たちは顔なじみであってもたいてい無視されるのがわかっているの で こちらからも無視してやるしかなかった。そいつはまっすぐランカの方に来ると明るいがお調子者っぽい感じで声をかけて来た。

「やぁ、ずいぶん久しぶりだねぇ。どこにいってたのさ〜子猫ちゃん」
「コロスぞてめぇ」

ランカは横目でちらっと見ただけで一言切り返した。一発パンチをぶち込んで大きくはねあがったサンドバッグが振り子のように戻ってく る。ランカは片手でそれを軽く受け止めるとその場を離れた。ジムの"王子様"に対して発せられた暴言に周りはざわめいた。




 ランカはグローブを外しドリンクコーナーに行くとスポーツドリンクを取りパックを開けてストローで飲みはじめた。ここは3階の窓際で眼下には人の流れが 見える。例の"王子様"はランカの横にやってくるとおおきなガラス窓に片手をかけてポーズをとった。何をしても決まっている感じである。
「ふふ、何か気に触ったんなら謝るよ。ランカさんっていったよね〜?どう?これが終わったら一緒に食事でもどうかな?と思ってさ。洒落た店を知ってるんだ よ、穴場なんだ」
「お洒落な店って疲れるのよね。あたしとしてはニンニクの効いた豚骨ラーメンが食べたい気分だな。もちろん一人でね」
冷ややかに男の方を向かずに切り捨て た。がそんなことで引き下がる手合いではない。このジムに通っているうちで若くて一番美人でプロポーションのいい女を前にこのプレイボーイの欲望が抑えら れるわけもなかった。特にプライドが高くて気の強い女となればその分落としがいもある。
「へぇずいぶん渋い趣味なんだねぇ。だったらボクの友人が居酒屋をやっててねお得意様限定のメニューがあるんだよ。
そこなら君にもお気に召すんじゃないか と思うんだ」
「あんたさ、あたしのどこがそんなにいいわけ?女ぐらいこの世の中にいくらでもいるでしょが」
「どこがって、そりゃもちろん全部だよハニー」
恥ずかしい台詞をさらっと爽やかな笑顔でいう彼の表情は真剣そのものだ、白い歯がきらりと光る。
「ふーん。まぁいいけどね、あたしはあんたみたいな人を外見でしか見ない人間は好きじゃないんだよね」
クサイ決め台詞にも全然動じないランカに男はちょっ と焦りを感じはじめた。
「とんでもない誤解だよ。ボクはいつだって本当の事しか言わないよ?君は本当に美しい」
「ふん、美しさなんてものにそんなに絶対的な価値なんてないよ。
あんたはどうか知らんけどあたしの美しさは初めから与えられた物で
その事であたし自身が鼻 にかけて威張る理由なんて全然ないんだよ」
「へ?何を言ってるんだ?君はまさか…?」
男の表情がかすかにこわばるのが見えた。
「そうだよ、あたしはア--」
「ら…ランカさんっ!!!」
その時、別の男の裏返った変な声が聞こえた。見るといつの間にかもう一人背の小さな男が立っていた。小太りで坊主頭にゲジゲジ 眉毛。この場には不似合いな感じだった。緊張で声はどもって少しガタガタ震えているのがわかる。
「そ、そ、それいじょ・いっちゃダメで…」
それだけいうのがやっとだった。
「あん?なんだ?お前?邪魔すんなよ」
割って入られたイケメン王子様は小男ににじり寄った。
そしてランカに聞こえないような小声で、しかしドスを利かせて 言った。
「あっちにいって余った贅肉でも落としてな、このキモオタデブが!ぶち殺すぞ?」
「う…ぐぐぐ……」
そんな脅しにも動じず彼はいつもと違い怒りの表情で睨みつけたままなんとかふんばっている。
「おいこら、そこのお前いまなんていった??」
今度はランカが凄みのある声で呼びかけた。
「え?」なんだ?ひょっとして聞こえたのか?しかし彼女はあの場所から一歩も動いていない。
ジムの中は他のトレーニングする人の音や音楽で溢れているから 聞こえるわけが無いはずだ。
「あたしの友達にキモオタデブっていったよな?ちゃんと聞こえてるんだぞ」
ランカが続ける。
「え?い、いや…そんなことは全然…」
男は取り乱しはじめた。
「今だけじゃないよ、こないだも女の子たちの前で彼の事を馬鹿にしてたじゃないか。
場違いだの無駄な努力だのって。全部知ってるんだぞ?」
彼の知る限りラ ンカの近くでそんな話をした覚えは無い…聞こえていたのだとすれば人並みはずれた地獄耳だ。ランカは飲んでいた硬質プラスティックの容器を手で紙コップの ようにくしゃくしゃに丸めてゴルフボールぐらいの大きさにした。それから両手のリストバンドをはずして床に落とした。どさっどさっと重たい音がした。
「…ひっ…イ、いったい、な、なにを??」
ランカの怒った顔を見て王子様の方がどもりだした。
「ぶち殺すともいったな?あんたがその気ならあたしがかわりに相手をしてやってもいいんだよ?あたしゃ他のアンドロイド程倫理規定がきつくないからね、半 殺しまでならやれるんだよ?」
ランカの口調には本気っぽい響きがあった。
「あ、アンド……イド??」
ランカの正体を知った男は青ざめた。とっさに逃げようとして回れ右をしようとしたが動きがぎくしゃくと出来損ないのロボットの ようになり足がもつれた。すかさずランカは丸めたコップの残骸を指ではじくとそれは男の頭の後頭部に当たり、そのままバランスを失ってぶざまに尻餅をつき すってんころりところがった。事の成り行きを見守っていた周りの男たちの歓声と女たちの悲鳴の中ランカは小男を連れてその場を脱出した。大恥をかかされた "元" 王子様の罵詈雑言がランカの耳にはかすかに聞こえて来ていた。『あの紛いもんの機械人形が!!ぶっ壊してやる!!!…』等々。
まぁやれるもんならいつだっ て相手してやるけどたぶんこないだろうなとランカは思った。
「ゲンゴロウ」
ランカは小男の名前を呼んだ。
「ありがとうな」
「い、いや…その俺は何もできんかったし…それにランカさんの事バレちゃったし…」
「いいのいいの、気にすんなって。あたし嬉しかったんだから」
「はぁ……」
「なぁ、一緒にラーメン食べに行こうよ。お腹空いたし」
「で、でもランカさん確か一人で行きたいって。さっき」
「さっきはさっきだよ。それともあたしと一緒じゃ嫌なのか?」
「と、とんでもないでス!ランカさん!!ご一緒させてくささい!!!」
緊張のあまり声が裏返った。
ランカはそんな彼にウインクで答えた。なんだか気分がよかった。





***


 あるまとRDは同じ家に住んでいる。もとはそれぞれ一人で住んでいたのだがメタルガードに入る際、訳あってあるまの方から同居を勧めたのである。正反対 な性格の二人だが意外と上手くいっていた。二人の家は背の高いビルの一番上、建物の外見は古ぼけて見えるが実際にはそんなに古い建物ではない。その屋根裏 のような場所に住居を構えていた。屋上がそのままテラスになっていてここのブロック全体を見渡せる。100Mほど離れた所に時計台があってあるまたちの家 とはほぼ同じ高さだ。折しも時計台の一角に鳩の群れが飛んで来て集まって来ていた。そんな穏やかな午後、あるまは床に寝転がって日向ぼっこをしている。あ たりには買い込んだお菓子が散乱していた。彼女の大好物の林永のフェアリーパイもある。テラスから日差しが差し込んで床に丸くなってまどろんでいるあるま の顔を照らした。あるまは寝返りを打ってからしばらくして目を覚ました。



「んにゃ〜…あーるでぃ…どこだー?」
目をこすりながら同居人の所在を確かめようとする。
RDは、いた。テラスの端の見晴らしのいい場所に座って本を大量 に積み上げてずうっーーと読み続けている。
あるまの口元がω型に緩む。彼女は立ち上がり居間に置いてあるポットの所に来るとカップを二つ取りココアの缶か ら粉末を入れてお湯を注ぐ。冷蔵庫から生クリームを出して溢れそうになるぐらい注いだ。それを両手にもって一滴もこぼさずにテラスにいるRDの側までまで やってきた。
「ココア、飲むだろ?RD?」
風が少し強いが不快な程ではない。薄い紫に少しくせっ毛な少女は名前を呼ばれて振り向いた。
表情は相変わらず乏しいが赤い瞳 の中で少し動きがあったように思えた。
「いただきます…。」
ぼそりといってカップを受け取った。あるまも隣に座って飲み始める。
「あちちち……ちょっとまだ熱かったなこりゃ」
温度はRDに合わせたので普通に熱めだった。
「あるまさんの体なら沸騰してても平気なはずですが…。」
あるまの"猫舌"にすかさず突っ込みを入れる。あるまは"さん"付けはやめろって散々言ったのだ けど彼女は誰に対してもそうだからもうあきらめている。だけどずっと一緒にいるとわかるのだが彼女は決して見かけ程感情が無いわけではない。さっきのよう に普段の発言にもちょっとした皮肉がこもったりもする。そんなRDをあるまは嫌いではなかった。
「まー好みだよ好み。舌のセンサーがそうなってんだからしょうがないよ」
「…ぬるくてもいいのに…。」
カップを両手に包み込むようにしてまたぼそりと一言。
「ん?なんかいった?」
「…いえ。」
「その本さ、全部読む気なん?」
RDの傍らに積み上げた何十冊という本の山を見て聞いた。
「…もうだいぶ読みました。」
RDは大抵ぱらぱらと本をめくるだけでかなりの速度で読み終えてしまえる。アンドロイドなら普通に可能だが彼女の集中力は群 を抜いているかもしれない。RDはカップを脇に置くと読みかけの一冊を取り上げた。が、彼女にしては案外遅いスピードで読んでいる.といっても1ページ1 秒程だが。作者はジェミィ・オーヴァレイという名前だった。
「それ、面白いのかな??」
あるまが聞くとRDは珍しく手を止めた。
「…よくある、大衆向けの冒険小説です。だけど若さに溢れていて作者には何か惹き付けられるものがあります。
…それだけなんですけれど。」
「ふーん、どんな人なんだろなぁ。RDが言うんならいっぺん会ってみたいよな」
 その本の作者はまだ十代の少女でそれほど売れっ子というわけではない。内容はずっと未来、人類が銀河系にまで進出している時代に主人公の少年は少女に出 会い数々の危険を乗り越えて困難に立ち向かっていく…そんなよくある他愛もない物だ。だけど本には文章には人柄が出る。言葉では言い表せない何かを彼女は 感じ取ったらしいのだ。この時代本が本の形で出回る事は珍しくなっており大抵はデータの状態でやりとりされる。この本についていえばどうやら作者本人がわ ざわざ自主的に制作してここの図書館に献本したらしい。ということはこのルナシティIIIに住んでいるという事なのか。作者近影には2Dの写真が載せられ ているが栗色のお下げ髪に丸いぐるぐる眼鏡をしているので本当の素顔まではわからない。しかし案外近い所にいるような気がなんとなくした。あるまからは見 えなかったがRDはちょっとだけくすりと口元で笑った。






***


「くしゅん!」
ジェシィはくしゃみをした.誰かが噂でもしているのだろうか?それはともかく彼女はボートの上でさっきいおんとアリスの二人が飛び込んだば かりの水面を見つめている。水面にはまだ波紋がゆらゆらと揺らいでいる。ここは湖の中心にある浮き島と岸との中間点でこのあたりで例の「怪獣」の目撃が多 くなされていたのだった。ボートの上には優伍とワッフル、ジェシィのペットロボPICO2(ピコピコ)が一緒だった。優伍は最初あまり気乗りがしない様子 だったのだがいおんが協力を申し出た上にワッフルに挑発されたからいおんの保護者としてはいかざるを得なくなったのだ。
 いおんはアンドロイドで最新型の強度を持つからこの程度の湖での潜水には何の問題もない。もう一人のアリスについては幼いときから地球の海洋学者の祖父 に預けられ各地の海の調査を手伝って来たのだそうで、ダイビングは得意中の得意らしく素潜りでも5分は息が保つと豪語している。今回は補助的に小型ボンベ を携帯していったが穏やかな人造湖ということもあり装備としては十二分だといえよう。
「本当にいるんだろうか?怪獣…」
優伍はジェシィに尋ねてはみたが依然として疑ったままだ。
「ふふん。恐くなって来たの?大の男のくせに」
ワッフルが茶々を入れる。
「うるせー、暇だからつきあってやってんだよ。おまえこそなんでついてきてるんだ?」
「そりゃもちろん、いおんちゃんを愛しているからさー」
「てめぇペットの分際でよくもぬけぬけと…」
そんなやりとりをジェシィは微笑ましく見ている。
友達の家の人間関係(?)が悪くなさそうな感じがわかるのはほっとするものだ。ジェシィの家もそうなのだが普段言い合いをしてるからといって必ずしも憎み あってるわけではない。二人ともいおんの事を気遣っているからなのだ。
「んーと、例えばルナシティの科学者が遺伝子改造に失敗して生み出した生物をこっそり処分しようとして出来ずにやむを得ずここに放した…っていうのはどう かしら?」
「はぁ?そんな古くさいSFみたいなネタ今時ないだろ、もう22世紀だぜ?」
「はうう…やっぱ没か……まぁこの手の話だと最初に調査した面々は非常に危険よね。
特に最初に潜ったメンバーには死亡フラグ立ちまくりだし」
くすりと微笑 を浮かべて独り言のように言うジェシィを見てこの娘はちょっと変わっているな、そう優伍は思った。
それにしても…湖は何事もないかのように静かだった。




 湖の水はとても澄んでいた。人造の湖だから当たり前といえば当たり前なのだが、この水はかつては宇宙を漂っていた巨大な氷の固まりだったのだそうだ。そ れを月軌道上で砕いて月面に掘った穴に落として溜め蓋をした上で太陽光で溶かし水にしたもので、かつて宇宙の星屑の一つだった物が今は月面都市で人が生き る為の血流となっている。ここの水は酸素の元になるし燃料としての水素も生み出す。ここに住むすべての人間に取ってなくてはならない物なのだ。
 いおんはゆっくり下に潜りながらあたりを見回した。彼女の体は機械なのだが全部が全部金属類で出来ているわけではない。内部フレームはカーボンナノ チューブだし人工筋肉は高分子素材で構成されている。人工皮膚も特殊な軟質素材で出来ていて人間と全く変わらない外見に見せている。そんなわけで意外に軽 量であり必ずしも水に沈むというわけではない。肺に水を吸い込んでその重みで沈む、浮かぶときは吐き出せばいい。彼女の肺は呼吸する為ではなく体内の熱を 排出する為のラジエターである。呼吸は同時に人工声帯を使って声を出すのに用いられる。そして肝心な所だが水に対しても平気な点だ。普段の生活でも体に付 いた汚れを落とす時は直接水で洗浄する、つまりはお風呂に入る事だった。真空中でも耐えられる程の強度はあるが放熱に問題があるので専用のアンダースーツ を着用している。メタルガードとなればその上でナノメタルエンジンという特殊なナノマシンで強化をはかるわけだが今回はまったくのプライベートな活動だっ た。もちろんノーマル状態でもここの水圧ぐらい問題ではない。
 横を見るとアリスが文字通り水を得た魚のようにすいすい降りていっている。いおんは水中無線機のスイッチを入れた。ノイズに混じってジェシィの声が入っ てくる。
『こちら、ジェシィ。いおんちゃん聞こえますか?』
 ペットロボのPICO2(ピコピコ)の体から通信用のユニットが出て来てそこから水中に繋がっている。
アリスは簡易装備なので直接会話出来ない。そのかわり世界共通手話を使って意思を通わせるのだ。
 いおんはメタルガードに入ってから手話のレクチャーを受けており自由に話す事が出来た。
アリスも幼い頃から使っているのか慣れた物だった。いおんはジェシィに返信した。
『いおんです。アリスちゃんも順調に降下中。あたりには何もいませんね…あ小魚がいるかな?』
いおんも声を出しているのではない。心の中で言葉をならべて無線機から送信しているのだ。耳は水中モードに切り替えてあたりの音を聞いている。ゆっくりと 水が流れる音がする以外、何もいない…ここは本当に静かな場所だ。

 ジェシィはノート型携帯デバイスを開いてソナーで湖を上から探知しはじめた。ソナーの端末はやはりPICO2(ピコピコ)だ。た だの学生たちにしちゃずいぶん用意がいいなと優伍は思ったが結構いいところのお嬢さんなのかもしれない。
「いおんちゃん、そこから湖の中心方向50メートルあたりに何か反応があります」
『了解。移動してみます』
 いおんはアリスに手話で伝えるとジェシィの指示する方向に向かって泳ぎだした。
しばらくすると…何かいるのが見えた…自分たちよりまだ下の方で何かが動いていた。
そいつはやがてこちらにだんだん近づいて来ているようだった。思ってい るよりずっと速い。
『さ、さかな?かな……??』
アリス共々向かってくるそいつを待ち構えた。湖の上から差し込んでくる光はそいつの巨体を浮かび上がらせた。体長は…だいぶ 長い。ずんぐりした体の前後に長い首としっぽ、胴体からはヒレ状の手足が四本伸びていた。首の先には丸い頭が付いていて目が赤く光っていた。
『え?えええええぇぇ????ホントにいたの!!!???』
いおんはびっくりした。そいつはまっすぐふたりのいるところにものすごい勢いで突っ込んで来 た。



「いおんちゃん?どうしたの??応答願います、いおんちゃん??」
「どうした??何があったんだ??」
慌てているジェシィに優伍が心配して聞いた。水中無線はバリバリとノイズを出しているだけで応答がこなかった。
「わかんない…ソナーはちょっと乱れてるけど…影が二つ、一つは近づいて来てもう一方は離れて行く…」
優伍は水面を見つめた。やがて水面に泡が上がって来 て水中から誰かが浮かび上がって来た。
それはアリス一人だけでいおんはいなかった。優伍は水の中にすぐさま飛び込んだ。
アリスは優伍と入れ違うようにボートに取り付く。
「何があったの!?いおんちゃんは??」
ジェシィが妹に尋ねた。アリスは沖の方を指差した。
「出たの!いおんちゃんはわたしをかばおうとしてあいつに…」
「あいつ???」
「いおんっ!!どこだーー???」
立ち泳ぎをしながら優伍は叫ぶ。
「なんだ?あれは??」
気がついたのはワッフルだった。水面に波紋が起きて何かが近づいてくる。やがてそれは影になって浮かび上がって来た。ゴボゴボと大 きな水しぶきを上げて水面から飛び出したのは丸い頭、赤く光る丸い目。長い首の下には巨体が隠れている。その首の根っこにいおんがしがみついていた。
「はふぅう……げほげほ」
口から水を吐いて呼吸を元に戻した。見た所どうやら無事っぽい。
「いや……無事なの…か??」
ワッフルはいいながら唖然としている。他のメンバーもそうだった。それにしても…そいつは怪獣というには妙な雰囲気だ。皮膚 の表面は爬虫類のそれというよりは黒いゴム質の素材に見える。目の光り方も人工的な雰囲気だった。




「ロボット……なの?」
ジェシィの結論にPICO2(ピコピコ)が耳を振って答える。これが怪獣の正体だったのか?
怪獣はいおんを 乗せたまま岸に、ボートハウスの方角に向かって行った。
「おう、戻ったのか。よかったよかった」
波止場についた一行を迎えた爺さんは怪獣の顔を見てほっとしている。
怪獣の方も爺さんの顔を認識しているかのよう な仕草をした。
「って、おいっ!初めっから全部知ってたんじゃないか?」
岸に上がって優伍はさすがに老人にくってかかった。老人はしれっとした表情でロボット怪獣の首筋 を撫でている。
「やぁすまんすまん。こいつはこの湖の管理の為に使われてるロボットでな、ワシはここでハウスの営業をする傍ら管理業もやっとるんじゃ。ところがこいつと きたら最近時々勝手にいなくなりおるんで困っとったんじゃよ。というのはどうも湖の中に友達が出来たらしくてなぁ…」
「おいおい、この期におよんでまだ言うか?ほら吹きもいいかげんにしろよ?」
「ちょっとまって、あれは何?」
ジェシィが湖の中に何か見つけたらしい。何かが動いている。
「あれは、お友達です」
いおんが知っているような口調で言った。
「ええっ?」アリスが聞き返した。
「この子がそういってましたよ。わたしたちにお友達が見つからないようにわざと襲う振りをしたんだって」
いおんは怪獣ロボットに教えられたらしい事を話し た。
「んーまぁこういうこともあるさ、うん」
老人は締めくくった。
「………」
優伍は絶句していた。水面には全長20mを超すような巨大なオオサンショウウオがゆらゆらと蠢いていた。
そいつはしばらく目の前にいたがやがて 湖の底深くに潜って行った。

第八話 了。


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